hitomachi_icon 元町映画館|リノベーション

元町映画館
所在地 神戸市中央区元町通
構造規模 鉄骨造2階建
竣工 平成22年8月
施工者 ベスト企画株式会社
鉄骨造2階建ての店舗を映画館にリノベーション


■設計をお引き受けするに至った経緯

設計料はあんまり払えないけど、ミニシアターの設計をやってみないか」という、ありがたいのかありがたくないのか分からないお話をいただいたのが2009年の11月頃でした。

設立間もなく、お仕事の全くないわが社のメンバーは、映画好きなメンバーでもありました。きっと映画館の設計なんて、一生に一度ぐらいしかできないに違いないと考えて「是非ともやりたい」とお返事をさせていただくことにしたのです。

ファサード

場所は神戸の元町通り商店街。浅見が17年勤めた勤務先のすぐ近くの馴染みある場所。

お施主さんは「開業するなら病院よりも映画館」という小児科のお医者さんでした。
じつは神戸で相次いで単館系の映画館がなくなっていた時期。神戸ではなかなか観ることのできない多様な作品を上映し、神戸の映画文化を活性化させたいと、お施主さんは10年も前に2階建てのビルを購入し、これを賃貸しながらがら映画館をつくるためのお金をためていたのだといいます。

このビルの1階部分を映画館に…というリノベーションのプロジェクトでした。

天井および舞台のペンキ塗り

■リノベーションの概要

建物は当初、1・2階ともパチンコ屋だったそうです。そして、その後、用途変更を経て、1階が店舗、2階が貸しホールになっていました。この時大苦労したのは、店舗から映画館への用途変更の為の役所協議でした。そして、これは分かっていたことだけど、とにかくお金がない。ということでした。

「お金がなければ、自分たちでつくる」わが社のスタイルは、この最初のプロジェクトで決まったといっていいかも知れません。

タイルカーペットの施工

実際には、映画館をつくる為に、何度も何度も役所と協議をすることになりました。確認検査機構、神戸市、消防署、保健所。
そして、既存の建物をリノベーションして映画館をつくるのは本当に大変だということを思い知らされました。
不特定多数の人が集まる映画館には、建築基準法も、消防法も、興行場法もみんな厳しい規制が課せられます。特に大変だったのは、避難経路の確保。消防署の避難経路の確保の判断と、神戸市の条例による避難経路の確保の判断は基準が異なるというのが曲者でした。この神戸市の条例には(既存の建物の形の制約で)最後まで悩まされたけれど、なんとかクリアすることができました。(映画館なのに、舞台がちょっと大きいのは、この基準をクリアするための工夫の1つだったりするのですよ)

壁仕上げのカーテン貼付け

もうひとつ頑張ったのは、みんなで工事をした部分。お金がないので、工事的には最小限の改修という設計にしたのだけど、あがってきた見積書は予算をオーバー。
見積りを精査して、削れるものを片っ端から削っても足らないところは、もう自分たちで施工するしかない。
タイルカーペットの施工、天井・舞台のペンキ塗り、壁にカーテンの貼付けなど、お施主さん・支配人さん・映写技師さん・神戸映画サークルの皆さん、その他沢山の人達がこのリノベーション工事に参加してくれました。

もちろん私たちも汗だくでがんばりましたよ。けっこうハードだったけど楽しかったです。
工事に参加してもらった皆さんには、この元町映画館に対する、よりいっそうの愛着が生まれたみたい。
皆で工事するっていいですよね。

待ち合いホール

■映画館の仕様
スクリーンの高さは約2m、座席数は66席(+車いす用座席1席)。
映写機・スピーカー・座席等は、全て廃館になった映画館から集めて来たものです。壁の吸音カーテンも貰い物です。
(カーテンは家庭用のミシンを2台持ち込んでみんなで縫ったのでした…。まさに手作りリノベーション)

劇場ホール

座席をひな壇上にし、前後の座席の並びをずらし、少しだけ広めの間隔で座席を配置し…。
小さいながらもゆったりと観やすい映画館ができたと思います。

床のタイルカーペットも、壁のカーテンのはりつけも、天井の塗装も施主さんを始めとする皆さんの素人リノベーション工事。
見えるところはほとんど全て、とても手作り感のある、ムラのある仕上がりとなっています。これもご愛嬌ですよね。

で、実は、映画の見やすさについてはなかなか好評です。
よい映画がいつも上映されています。
皆さんもぜひ。

神戸・元町のミニシアター|元町映画館