年末のごあいさつ(2013)

さて。毎年恒例ですね。

例によって昨年末のご挨拶を読み返したらこんなことが書かれていました。

いつも申し上げていることですが、12月31日と1月1日の間の境目は、他の日々の境目と比べても、何も違うところはありません。おそらく猫に聞いたら分かると思いますが、この夜に特別な感情を付与できるのは人間だけですよね。人と猫とどちらが賢いかは知りませんが、猫のあの自由な様子を見ていると、大晦日や元旦を特別視する人間が、とても愚かなことにも見えてきます。
まあしかし、そこは私も人間。何かを区切って節目を付けずには生きられない生き物みたいです。そんなわけで、本年もご挨拶を申し上げます。

これを読んで、去年の私の流行が「猫に聞いたらわかる」だったことを思い出しました。私の語りたいことは常に同じだと思っていますが、その語り方は年々変化しているのだなあと思います。

さて、この年末は、上にあげた昨年の愚かな私の言説を真っ向から否定することから始めたいと思います。もとより、何人かの人から「やっぱり大晦日は特別なんじゃないの?」とご意見をいただきましたが、その通りだと思います(笑)

年末や年度末の節目は、来し方を振り返り行く末をみつめるために、古の人達が決めてくれたよい区切りであるわけで、その叡智を猫の知見と比べようというのがそもそもの間違いじゃないですか(笑)

毎年こうして1年を振り返り、ここにこうして文章を残している。その繰り返しが蓄積となって、これを読み返すと、なんとなくわが社の基本姿勢なり社是なりを形成し始めているような気がして、やはり区切りというのは大事だろう、などと思い始めた次第です。
継続することの意味ってこういうところにあるのなあと思ったり。

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さて、
会社を立ち上げてそろそろ4年になろうとしています。こうして未だに会社が存続しているというのは、ひとえにご支援をいただいている皆さんや、クライアントの皆さん、それからわが社のスタッフ、そして元スタッフなどの皆さんのおかげだと、心からそう思います。ほんとにね。

経済的に余裕がないのはいつもの通りですが、昨年度、かなり多くのお仕事をいただけたおかげで、年度末こそ本当に大変な毎日を過ごしましたが、今年度の前半は、経営的には毎年よりもかなり余裕ができたのは事実です。
しかし、まあ、だからといって年度が明ければ途切れるお仕事も多いわけで、遊んでいられるわけでもありません。しかも(大声では言えませんが)年度末に積み残したお仕事を長々と引っ張ることになり、新規のお仕事に取り掛かれることができるまでに相当な時間をかけることになりました。

そんなわけで、お仕事がたくさんあるのも、お仕事が全くないのもどちらも苦しいことを痛感する1年となりました。

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今年の話題はいくつかあって…。順番に語るのも大変ですが…

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一昨年よりお伝えしております、兵庫県による「東日本大震災に係るひょうごまちづくり専門家派遣」は、まだまだ続いており、宮城県気仙沼市に通う日々は続いています。兵庫の側の「阪神・淡路大震災復興基金」にも限りがあるため、いつまでも兵庫県に派遣されて気仙沼に通うわけにもいかず、その後をどうするかを真剣に考えないといけない状況を迎えています。

気仙沼の風景は、実は1年前とそれほど変わっていません。地盤沈下し、津波の被害を受けた地域の土地のかさ上げのために各地から土砂が運ばれていたり、早くに防災集団移転促進事業の認可を得たところでは土地造成の準備が始まっていたりはするものの、何がどう復興しつつあるのか、目で見える範囲ではなかなか分からないものがあります。

ただ、地元の皆さんの動きは確実に変化しているように思います。私たちの通っている地域でも、これまでより「自分たちの手で自分たちの地域をつくっていくんだ」という意識の人達が数多く見えるようになってきました。

防災集団移転を進めている地域では、事業も確定し、来年1月からは造成工事も始まります。平成27年3月の造成工事の完了後に、参加される皆さんがそれぞれどの区画に住むのかという、移転後の敷地決めを、この年末に行いました。実は、最後はくじ引きになるかもということで、くじの方法を考えて欲しいと頼まれ、私がくじを用意して会合に出向きました。しかし、なんと12軒の人達の敷地が全て話合いで決まるという素敵な結果となりました。
被災後、30回を超える会合を開き続け、地域内のコミュニケーションと情報の共有を大切にし続けてきた結果が、ほとんど脱落者を出すことなく、皆が仲良く高台に移転できるという結論を招いたのだろうと思います。会合を続けることの意味・コミュニケーションの場を設け続けることの意味を、この地域の皆さんから教わることになりました。

また、土地区画整理事業の決定している地域では、この年末に、地区内に住んでいた人達に呼びかけを行い、自分たちの地域の将来像を自分たちで考えようという、住民ワークショップが始まりました。これは、行政やコンサルだけに任せきりにせず、自分たちの意見を今後のまちづくりに反映できるようにしていかないといけないのではないか?という空気が地域の中に広がってきた証左なのではないかと感じています。そして、地元行政もこれに応えたいと努力している様子が、なんとなく見えてきました。

こうして、少しずつですが、希望も見えてきました。もちろん毎日の暮らしは喜ばしいことばかりではありませんが、それでも、小さな希望の光を、皆であたためて、よりよい未来を目指そうという被災地の皆さんの姿勢には感心することばかりです。

被災地の話はどうしても長くなるので、いつかどこかでまとめてお話する機会ができるといいなあと思っています。
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さて、2つ目の話題。

昨年わが社に新メンバーの福田さんが現れたことはお話したと思います。
福田さんの任期は2013年の3月までだったのですが、福田さんは4月から香美町の臨時職員として雇われ「地域おこし協力隊員」として昨年と全く同じように香美町村岡区の長須集落に住み続けています。

そして、さらにわが社では、兵庫県の「集落サポーター派遣事業」の採択を受けて、福田さんと同じ家に住んでもらいながら長須集落のお手伝いをしていただくスタッフを募集しました。
これに手を挙げてくれたのが、本多秋香さん。

本多さんは、6月から、わが社が企画した、長須でかつて行われていたという紙すきをやってみようというプロジェクトに積極的に取り組んでくれています。11月には、国の補助事業を使って旧公民館を整備した「紙すき小屋」がオープンし(改修設計はわが社の小林さんが担当)、村岡高校の生徒さんたちと紙すきイベントを行いました。
この時の様子はわが社のブログ「長須紙漉き小屋、ついにオープンしました!」をごらんください。

今後は、集落の皆さんや村岡高校の生徒さんのご協力を得ながら、多くの人達にこの紙すきを楽しんでもらえるような運営をしていきたいと考えています。

本多さんの書いてくれているブログが「ながすくらす
本当に個性的な人です。常に前向きで一生懸命。ちょっと不思議なところもあるけれど(笑)正義感に満ちていて、わが社の頼もしいスタッフです。

実は、兵庫県の小規模集落元気作戦については長須は今年度でおしまいです。事業が切れちゃうと、私たちがアドバイザーとして通うことも難しくなりますが、ここまで関わった長須の皆さんに「事業がおしまいだからこれでおしまいですね」などと言えるわけもなく、長須とのお付き合いも、まだまだ続きそうです。そして、できたら、福田さん(すでに香美町臨時職員)や本多さん(わが社には3月まで)と、これからも上手な協力関係が続けられるといいなあと思っています。

この活動に関わり続けることが、どこかで価値を生むと信じて続けたいと思います。

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3つ目の話題は、丸味地区。

丸味地区でも、地元の特産品開発をしようということで、公民館の厨房を改修して特産品づくりを行うことになりました(ここでも改修設計担当は小林さんです)。公民館の改修は年末に終わったので、これからは特産品生産に入りますが…その前に…。

実は、丸味の皆さんが育てた大根が、とんでもなく美味しい大根でして…
これを神戸で販売しようということで、そのお手伝いをさせていただきました。
その様子はわが社のブログ
丸味こだわりの雪わり大根、販売します!
丸味のゆきわり大根プロモーション
丸味のゆきわり大根、完売しました!!!
などをごらんください。

丸味の事業も今年度でおしまいですが、今後も、なんとか丸味集落と関わり続けたいと思います。

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4つ目は「おさごはん」

わが社は実は出版事業部を持っておりまして…機会があれば本を作りたいと思っていたのですが、わが社がお手伝いをさせていただいていた、養父市八鹿町の小佐地区で続いている「おさごはんの会」の2年の活動の記録を冊子にした「おさごはん」という本をつくりました。(残念ながら本屋さんでは売っていません…)
地域の人達がたくさん乗っていて、毎回の会合で作った料理のレシピも掲載しているというちょっと素敵な本になりました。
その様子は
第13回 おさごはんの会が開かれました
「おさごはん」のレシピ本が神戸新聞に掲載
などをごらんください。

この「おさごはんの会」は、兵庫県の事業の終了後も、ずっと続いていて、地域内の重要なイベントの一つになりつつあります。地域の元気を取り戻したいと、地域の皆さんが地道に活動を続けていることが素晴らしく、こうした活動のお手伝いを今後も続けたいと思っています。

この本。実は、ご希望の皆さんには、1冊500円にてお分けしております。
ご希望の方はこちらへ→「「おさごはん」(レシピ集)をご希望の方へお知らせ

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この他、養父市大屋町筏ではゆずを使った特産品の開発を続けていますし、交流センター建設に際し設計を担当させてもらった馬瀬地区と東灘区青木の自治会の皆さんとの交流事業は今年も続いていますし、きっと来年も続いていくと思います。そしてわが社は、今年度、新しく担当する地域も増えて、ますます楽しく忙しくなりそうな気配です。

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毎年長くなってますよね。もう少しおつきあい下さい。

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神戸市のいくつかの地域でも、新しくまちづくりのお手伝いをすることになりました。

特に、北区のある地域の皆さんとは、3年ほど前から年度末の地域づくりワークショップのお手伝いをさせておりましたが、これが縁で、今年度は別な形でまちづくりのお手伝いをさせていただくことになりました。会合に参加されている皆さんが若い皆さんで、意欲も行動力もあって、会合に参加しているだけで楽しいという地域です。これから地域全体に「子育て&交通問題に関するアンケート」を作成することになっています。年度末にかけてどんどん楽しくなりそうな気配です。

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各地での講演や講座・先生のお仕事

今年度は、長須での紙すき事業を手伝ってもらいたいという思いをきっかけに、浅見が村岡高校の地域創造類型の生徒さんたちに、年間3回の授業をさせてもらうことになりました。(その3度めの授業が「紙すき体験」だったというわけです)

他にも、西宮市さんの「宮っ子のいえアドバイザー」に登録させていただいたことを契機に(登録1号ですって…)、市内で子供たちを集めて「エコいえワークショップ」をさせていただいたり、地域のお母さん達に「エコな暮らしとは?」という講演をさせていただいたりと、市民向けの授業をすることも増えてきました。また、「地域の話合い入門」という名目で、神戸市のまちづくり学校や、ある学会などで講義をさせていただいたり、但馬のある業界団体さんで「田舎を元気にするためには」という講演をさせていただいたりもしています。

浅見の個人的なお仕事ですが、摂南大学では、昨年同様、前期の造形演習の授業を今年もやらせてもらっていますし、今年度から、後期は神戸工業高等専門学校での授業も始まりました。

あちこちからお声がかかるのはとてもうれしく思います。
今後も、いろいろな場所で多くの皆さんにお会いできるといいなあと考えています。

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建築設計の話も

そんなこんなで、忙しく飛び回っておりまして、なかなか代表浅見に、建築設計のお仕事に向き合う時間がなく、実情としては建築設計関連のお仕事については、小林が一手に引き受けているという状況が続いています。

しかし、現在、いくつかの設計のお仕事のお問合せをいただいている関係もあり、これからは少し体制を考えないと、建築士2人だけで乗り切るのは難しいかもなあと思っていたりもします。

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他にも、建物定期報告業務の話だとか、完成した元町映画館の2階の待合室の話だとか、まだまだお知らせすることはあるのですが、書き始めるときりがないのでもう一つでおしまいにします。

実は、来年からオフィスが広くなります。

今まで事務所を置いていた深江のオフィスは、都市計画コンサルタントの後藤さんのオフィスのうちの1室のうちのさらに半分を間借りしていたのですが、後藤さんの都合により、わが社が1室全体を賃借することになりました。これまで、賃料をはじめ、事務用品やらコピー機などを後藤さんのオフィスに融通してもらって運営してきましたが、今後はわが社内で完結していないといけません。
広いオフィスをどう維持するかを含め、少し気分を引き締めて動きたいと考えています。

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特に集落のお仕事や、東北のまちづくり支援のお仕事は、事業に期限があるため、今後も継続して地域に関わっていくためには、関わりの中からわが社の収入を得ていくことが重要になりつつあります。そういった事情も合わせて、少し会社全体の動き方や、会社の規模を見直さなきゃいけない時期が来たのかもしれません。

ともあれ来年は、会社の進む方向性を明確にした上で、できるだけ多くの皆さんのお役に立てるよう、さらなる努力を続けたいと考えています。皆さんご支援ください。

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長々と失礼いたしました。今回も、時間がなくて、えらくとっ散らかった文章になってしまいました。
申し訳ありません。

皆様、本年も大変お世話になりました。こうしてお仕事が続けていられるのは、皆様のご支援・ご協力あってのことと深く感謝申し上げます。

そして勝手ながら、来年もまた、皆さんの叱咤激励、ご指導ご鞭撻をいただけますことをお願いして、年末のご挨拶といたします。ぜひみなさん、良いお年をお迎え下さいませ。

浅見雅之

100以上のまちづくりに関わった専門家が 日本全国、どこにでも
お伺いします。

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