馬瀬交流センター | ||
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所在地 | 兵庫県養父市小佐 | |
構造規模 | 木造平屋建 | |
竣工 | 平成23年10月 | |
施工者 | くまだ建工社 | |
みんなで相談しながらつくった地域集会施設 |
■設計の概要
養父市にある約60世帯が暮らす、馬瀬地区の地域交流センターです。
馬瀬地区は、小佐谷に位置し、田んぼと山並みの美しい集落です。
そもそもこの地域に関わることになったのは、兵庫県の「小規模集落元気作戦」のアドバイザーとして集落の会合のお手伝いをしていたのがきっかけです。
実は、そもそも公民館が老朽化しているうえに、大きな階段の上にあって、地域の皆さんが使いにくくなっていました。私たちが訪れた時には既に、地域の皆さんで、集会所建設のための用地買収や、建物建設のための積立を何年か続けてきていたところでした。
私たちの任務は、馬瀬の地域の元気を出すことでしたから、まず地域づくりのためのビジョンを皆でつくって、そのビジョンの中で公民館の建設を位置づけるべきなのではないかと、地域内での会合を進めたのですが…
どんな話合いをしていても、公民館の話が出てきます。
ハコモノの議論を先にしようとせずに、現時点での課題を整理して、地域の将来像を描いてみましょう。という話が通じません。「なにはなくても公民館」「公民館があればビジョンも考えられる」と、こんな感じ…
仕方がないので、こちらもプロです。公民館の建設をお手伝いすることにしました。わが社では、地域集会施設を設計する場合でも基本スタンスは変わりません。誰かに丸投げせずに、自分たちで考えて自分たちで作る。わが社がやるのは、皆さんが「自分たちで作る」ことのお手伝いでしかありません。
みんなで建物の形を考える時に一番重要なのは、チューニングです。チューニングというのは、皆で同じ空間体験をしておくこと。「A地区の公民館のキッチンのあのカウンターが便利そうだった」と誰かが言った時に「ああ、あれはいいな」と思えるか思えないか、そういう会話ができるかできないかというのは、参加者全員が、どれだけ同じ空間体験をしているかどうかにかかってきます。見たこともない空間を判断することはプロにだって難しい。地域の集会所を作りたいなら、たくさんの集会所を一緒に見に行って、同じ空間体験・同じ言葉を積み上げることが重要だと考えています。みんなの波長を合わせる、わが社では、この作業を「チューニング」と呼んでいるのです。
この他にも事業主体をどうするか、ランニングコストはどれくらいかかるか、などを皆で相談しながら、計画を進めていきました。実は、平成22年度の事業として進めていましたが、平成21年度の12月に国の事業仕分けにかかり、国庫補助がつかずに計画がストップするなど、色んなことが起きました。
間取りは、玄関、大会議室(約75m2)、研修室(10帖)、調理実習室(約35m2)、交流活動室(25m2)と便所、倉庫で、延べ床面積273m2です。
大会議室は、馬瀬区の総会が開ける広さを確保しています。また、机、椅子が全てしまえるよう倉庫を設けました。
馬瀬では、お餅つきなどをするため、土間ペースが必要となるため、交流活動室は、靴であがれる土間仕上げとし、調理実習室との動線を大切にしました。
外観は、馬瀬の集落、景観に馴染むようなデザインを心がけました。大地からすくっと立ち上がった力強い建物が作りたく、切妻の石州瓦の一文字葺きの屋根がとても美しい建物に仕上がりました。外壁は杉板と、漆喰調塗装で仕上げています。
内部は極めてシンプルに、シンプルながら考え抜いたデザインを心がけました。主に、床は桜の無垢フローリング、壁および天井はビニルクロスで仕上げています。大会議室の天井については、吸音効果を狙って、穴あき石膏ボードとしています。
馬瀬は積雪荷重1.5mと決まっています。この積雪荷重に対して、大会議室の大スパンを飛ばすために構造設計者と共に、構造的な工夫を行なっています。このため、木材の加工および、建て方が難しく、工務店さんにはとてもがんばっていただきました。
現在、地域の交流の場として、高い頻度で交流センターは使われているようです。
地域の皆さんに、いつまでも愛される建物であって欲しいと願っています。